SET24
SET25

調整の結果ピンチゴムローラーが片べりしていてテープが多少斜めに引っ張られているよ
うなので、今回は交換して再度ガイド調整をしました。

1.基準レベルの調整

315Hz の全トラック録音済みテープを再生します。機器のカタログ等での基準再生レベルが
左右同レベルになるように出力をミリバル等で監視しながら再生基板部の半固定ボリウム
を調整します。また機器本体のVUメーターをメーターレベル設定半固定ボリウムにて0dBに
調整します。

LN TAPE
LH TAPE
CrO2 TAPE
SET15

LN ノーマルテープ

LH ハイポジションテープ

CrO2 クロームポジションテープ

カセットデッキの名機メーカー AKAI の GXC−709D
2ベッドカセットデッキを修理・調整します。

2.トラック調整・アジマス調整

基準レベルが設定終了したら次は、トラック間のヘッド位置の設定をします。最初に1000Hz
0dB の4トラックテープを再生し、録再ヘッドをテープと平行に動かして左右のレベルが同じ
になるように調整します。次に10kHz -15dB のアジマス設定用テープを再生して、録再ヘッド
をテープにあたる角度を動かしてレベルが最大になるところに調整します。この一連の作業
を3〜4回繰り返して2つの作業の条件を満たすように調整します。

GXC709D-B

正面

録音再生基板部 中央が録音再生スライドスイッチ

故障症状2 −巻き戻しができない−

今回の故障状況は巻き戻しレバーを押しても巻き戻しが動かず動作レバーがリセットして
します症状です。メカ部分を分解してみるとアイドラのゴムローラー部分が変形して駆動ベ
ルトがスリップしてプーリーが動かないようです。対策として巻き戻しリールのアイドラゴム
の成型修正および再生時に早送り・巻き戻しプーリーへ接触しないように位置調整、早送
り・巻き戻しプーリーへの伝達アイドラのアイドラゴム交換、各駆動軸へスピンドルオイルの
注油、無水アルコールにて各部清掃、またフライホイール軸受けパッキンワッシャーの交
換およびモリブデングリスの塗布、軸受けの遊びの調整、駆動伝達ゴムベルトの交換等を
実施しました。

SET08
SET07
SET06
SET28

メカ部分の組立と組込風景

SET27
SET26
SET04
測定結果

早送りトルク   110g/cm
巻き戻しトルク  60g/cm
巻き取りトルク  45g/cm
バックテンション 3.5g/cm

巻き戻しトルクは 60g/cm ですが、巻き戻し
動作には問題ありません。また再生時に巻
き戻しリールのアイドラが、早送り・巻き戻し
のプーリーに接触するとバックテンションに
影響が強くワウフラッターの影響が大きくな
るので調整しました。

巻き取りトルクおよびバックテンション測定風景

基準レベル調整風景

トラック調整風景

SET21

アジマス調整風景

SET01
SET17

3150Hz 0dB のテープを再生します。出力
に周波数カウンターを接続して、モーター
のスピード調整ボリウムを調整します。
設定値は全体の±0.5%程度にはしたいと
ころです。つまり3150±15Hz位になるよう
に調整します。またテープの巻きはじめと
巻き終わりでは速度が変化しますのでこ
のことを考慮して調整する必要があります
さらに聴感上速度が遅くなると間延びした
ように聞こえますので−側には1〜2dB程
度に抑えた方が無難です。

最後にフウとフラッターの確認をします。通常の測定は、3150Hz 0dB のテープを再生して
出力に3150Hz を対カットするフィルターを回してレベルメーターを接続しはみ出た信号を
監視する方法をもちいります。今回はピアノの和音テープ再生とクラリネット独奏テープ再
生を用いて聴感上の確認をします。ピアノの和音テープは、大きなうねりがあるように聞こ
えなければ正常です。クラリネット独奏テープは短音の音にビビリがなければ正常です。
ワウフラッターが発生するのは、ピンチローラーの損傷、ベルトの劣化、モーターの劣化、
異常なバックテンションの負荷、走行部の汚れなどです。ワウフラッターが大きい場合は
これらを点検し異常部分を解消する必要があります。
以上で再生に関する調整は終了です。

SET12
SET10
SET09

デジタル機器の発達とともに影の薄くなったカセットデッキですがレコードプレーヤー同様
まだまだ現役で使用している方々が多いようです。このカセットデッキもジャズファンの中
では低価格ながら評判がよかったように聞いています。実際にAKAIの最高峰のシリーズ
は3ヘッドのオートリバースWカセットデッキですがせっかく減りの少ないGXヘッドを採用し
ているのに、オートリバース化のために構造上の大きさを小さくして、しかも180°回転さ
せて使用するようにしたため調整が難しくなり、このため真の能力を発揮するセッティング
された物の流通が少なかったために一般的にはAKAIは2ヘッドの方が音がよいとされて
いるようです。確かに私も昔メーカー修理として数十台ほど扱いましたが3ヘッドデッキは
ヘッドが小型化したせいかAKAI独特の高音の抜けが悪いという印象がなく、どちらかとい
うと今風の音にちかく音の厚みが薄くなった割には切れがよくなった感じがしました。しか
し、2ベッドデッキは昔ながらで若干高域の抜けが悪いですが何ともいえない低音の音の
厚みがまるで真空管アンプの音を聞いていルようなとても魅力的な音がします。

SET05

故障動作確認のためテスト用のテープを再生してみると、無音時に半導体劣化時特有の
「ガサゴソ」という雑音がでていることを確認しました。またテスト録音をすると接触不良時
のような雑音と録音音量が不安定なことも確認しました。修繕作業として前者は、再生増
幅部のトランジスター10個を検査して3個の劣化が原因と判明しましたが、前回交換され
た様子が無いので同時期に実装された物と判断して10個すべてを交換しました。後者は
写真の中央に見える録音再生の切替をする多連スライドスイッチの接触不良が原因と判
明しましたので、分解洗浄をしました。その他古いのでコンデンサー等の容量抜けなども
検査しましたが、劣化してはいないので不用意に交換して音に影響が出ると困るので今
回はそのまま交換せずに洗浄だけとしました。

GXC709D-F

故障症状1 −無音再生時に「ガサゴソ」という雑音が出る−

SET29
駆動部の動作確認と調整

まず調整前に実際にテープが走行する部分の油などの汚れを取り除きます。また調整に
使用する工具は、帯磁していない金属工具かセラミック製の工具を使用します。

ミラーカセットという特殊なテープ(鏡を走行部上部に設置することによりテープ走行を機器
前面より確認できるようにした物)を使用してカセットの中心をテープが走行するようにガイ
ドを調整します。この機器の場合は、消磁ヘッドとテープガイドです。

早送りトルク測定風景

巻き戻しトルク測定風景

SET20
テープ再生の動作確認と調整

調整の準備として、周波数カウンター、ミリバル等と調整用テープを準備します。
再生レンジをノーマルテープにあわせ、ノイズリダクションスイッチをOFFにします。

SET19
SET18
SET03
SET02
SET23
SET22

3.テープ走行スピード調整・ワウフラッター確認

再生走行調整の最後はテープスピードの調整です。

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SET13

手順1

ノーマルテープを1000Hz 0dB で録音して再
生する。RECレベル、バイアスを調整して録
音時のレベルと再生時のレベルが一致する
ように調整する。次にテープを交換テープレンジを切り換えて同様の作業を繰り返して、
各テープに交換してもレベルが同じになるよ
うにひたすら調整する。

手順2

手順1同様に今度は10kHz -10dB で録音再生を繰り返し、REC-EQレベルを調整する。
おそらくすべての条件を満たす調整は難しい
と思われるので、一番多く使用するテープに
あわせ他のテープは妥協する。

以上で録音調整は終了です。

SET11
後面

無水アルコールを塗布した綿棒による清掃風景

メカ部分の調整前にヘッド部分の消磁作業
を実施します。テープ走行部分に磁気があ
ると再生特性(特に高域)に影響を及ぼしま
す。

基準レベルテープ再生風景

EQレベル調整風景

テープ走行スピード調整風景

今回は下記の標準的なテープを使用して設定調整いたします。機器のライン入力に波形発
振器を接続、出力にミリバルを接続して調整を始めます。

− カセットデッキの修繕・調整 −                   2013.02.14

2つの条件を満たす調整が終了したら最後
に10kHz -15dB のテープを再生して、EQ設
定用の半固定ボリウムで高域再生レベル
を調整設定します。

SET16
テープ録音の動作確認と調整